【先天性四肢障害】幼稚園・保育園の選び方と園生活。周囲への説明
子どもたちにとって、初めて集団生活を経験する幼稚園・保育園。
入園時はどんなお子さんのパパ・ママでも、成長を喜ばしく思う一方で、不安も尽きないことと思います。
ただでさえ心配な新生活ですから、四肢障害などの身体的特徴がある場合、やはりその緊張感は計り知れないもの。
四肢障害のあるお子さんの入園に際し、パパ・ママの主な不安要因としては
・いじめや不登園などの心配
・カリキュラムをこなせるか
・先生や他の保護者からの偏見の有無
などに分類されるのではないでしょうか。
また、加配の有無も重要なポイントになるかと思います。
幼稚園・保育園は、今後延々と続く集団生活のファーストステップです。
親子共に笑って卒園し、堂々と小学校につなげたいですね。
現在Hand&Foot(はんど あんど ふっと)には、様々な形の手足でうまれてきた子どもたちや当事者が、全国750家族集まっています。
ご両親の不安な気持ちがすこしでも軽くなれば、と、経験者のママが入園や園生活、周囲への説明について、お話を聞かせてくれました。
四肢障害のある我が子。園選びと周囲への説明、我が家の場合はこうしました
息子は、両手と片足の指が欠損・変形している絞扼輪(こうやくりん)症候群。
障害者手帳の取得は不可能な形状ですが、一目で欠損と変形が分かります。
我が家は共働きだったので2歳から私立保育園に入園したのですが、その保育園のモットーで最も安心できたフレーズが、「みんなちがってみんないい」でした。
当たり前のことではありますが、意外とそれを謳っていない幼稚園・保育園も多いことが後日分かりました。
幼稚園、保育園のタイプをごく大雑把に分類すると
・どんどん外遊び系
・お勉強、インドア系
・文武両道系
の3パターンに分かれるのではないかと思います。
息子の通っていた園は通信教育などを扱う株式会社が経営する保育園で、どちらかというと知育に重点を置いていて、1クラスは15人というアットホームな園でした。
外遊びは少ない方でしたが、その半面穏やかな子が多く、何よりも園に運命を感じたのが、園長先生。
なんと、園長先生は子供のころに怪我をし、片手の親指を失っていたのです。
入園前に行った面談では、園長先生がご自身の指を見せながら「大丈夫ですよ」と安心させて下さいました。
これは非常にまれなケースではありますが、人との縁や環境の大切さをしみじみ感じた一コマでもありました。
【園生活】唯一困ったことは、「軍手の用意」くらい
保育園の場合、就園年齢未満児(~2歳まで)はお互いの身体的特徴に違和感を覚える子どもは少ないと感じました。
3歳以降になると、言葉の発達と共に他者との違いにも気付き始める子が出てきましたが、ここでもやはり環境の良さは大きく影響していたように感じます。
息子の指に疑問を持った子どもたちは、本人や先生、または保護者に率直に質問しますが、その際、言葉に窮する方はほとんどいませんでした。
「みんなちがってみんないい」をモットーとしていた園だったからでしょうか。園長先生も優しくフォローしてくださいました。
息子が園で生活していく上で不便を感じたことはなかったと言います。
お箸の練習も心配しましたが、本人なりの持ち方を自分で習得し、うまく使いこなせるようになりました。
そもそも手の形状が違うため、私たちがアドバイスをすることも難しく、発達支援センターの作業療法士さんに一度見てもらう程度しかできませんでした。
唯一困ったことと言えば、「軍手の用意」でした。
芋ほりなどに出かける時は軍手を用意することになっていましたが、一般の軍手だと指が欠損している部分はブラブラしてしまいます。
そのままでは使いにくいので、息子の手の形状に合わせて指の部分を整えることで対応していました。
芋ほりは1年に2~3回ほどあり、毎回洗濯ができないほどに軍手を汚して帰ってくるため、芋ほりに行くたびに軍手を新調していました。
【私たちのスタンス】周囲や本人への説明
入園後、最初の保護者会で息子の手足について言及しました。
その際伝えたことは
・障害名、生まれつきだが原因不明であること
・手足のことについて、疑問があればどんどん質問してほしい
・できるだけ本人の力で何事もやらせたい
・どうしてもできないことがある場合は補助をお願いすることもあるかもしれない
・手足のことに関わらず、迷惑をかけた場合は伝えてほしい
ということでした。
幸い、理解のある保護者の方ばかりで、精神的にも支えられてきた部分は大きかったと思います。
息子には、2歳の半ば位から手足のことについて説明しました。
「おなかの中で怪我しちゃったんだ」
「手足の指がないことで、もしかしたら不便なこともあるかもしれないけど、お父さんやお母さんは手足の指があってもできないことがいっぱいあるよ。
あなたの得意なことを一緒にみつけよう」
などです。
最初はピンと来なかったと思いますが、年齢が上がるにつれ、納得した様子を見せるようになりました。
【弟の園で・・・】胸が痛む出来事
当時、弟とは別の園に通っていたため、弟のお迎えに息子を連れていくことが度々ありました。
弟の園は息子の園とは全く異なる雰囲気で、どちらかというとやんちゃ度の高い園だったように思います。
弟のクラスは、息子の園に比べてクラスの人数も多く、特に活発な子が多いクラス。
ある日弟を迎えに行くと、ある女の子が息子の指の状態を発見しました。
「きゃー!こわーい!」「きもちわるーい!」「うわぁぁ」「おばけ!」
と、その女の子は大きな声で仲間に知らせ、その声で数人の子どもたちが駆け寄り、息子の手を見ては感想を言い合っていました。
息子にとって、子どもたちからそのような接し方をされたのは初めてで、これまで手をどこでも堂々と出していた息子が、初めてサっと後ろに手を引っ込めたのです。
無邪気な子どもに対し、私が最も恐れていた言葉を聞いた初めての体験でした。
後日、息子にその時の話を聞いたところ、「まぁ気にしてないよ」と明るく答えていましたが、表には出さないものの、少なからず傷ついたことは確かだったかと思います。
息子はそれまで、「手どうしたの?」と普通のトーンで聞かれることは度々ありました。
その際は「おなかの中で怪我しちゃったんだ」と返していて、その後相手の子から更に追及されることはほとんどなかったので、説明するときも堂々と両手を見せながら話していました。
ですから、その息子が手を引っ込めた出来事は、私にとって非常に胸が痛む場面でもありました。
もちろん、その園の子どもが全員そういう子どもだという訳ではありませんし、息子の園にはたまたまそういう子がいなかっただけかもしれませんが・・・。
ただ、そういう時に本人や保護者が相手の子をどのように納得させ、どのような言葉で切り返すか、本人にどのようなフォローをするかというのは、何度かシミュレーションしておく必要があると感じました。
お子さんの性格や雰囲気に合った保育園選びを
子どもは良くも悪くも正直です。悪気がなくても、思ったことが口から出てしまいます。
子どもが傷つかないように先回りすることは難しいのが現実です。
ただ、集団生活の最初のステップとして、幼稚園・保育園の環境はある程度選ぶことができるので、ぜひ複数の園を見学してみてください。
お子さんの性格や雰囲気に合い、手足の状態を理解してくれるような園が必ず見つかると思います。
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「ふつうって何だろう?」
「多くの人と違うことはかわいそうなこと?」
この絵本を読んで得られる気づきの一つ一つが少しでも多く集まれば、世の中の「驚き」も変化していくと信じています。
この絵本と共に、「初めて会ったとき、どうかびっくりしないでね」そんな気持ちがたくさんの人に届くことを、子どもたちと共に願っています。
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