「どうか胸を張って入学に臨んで」―手足に欠損・変形がある息子の小学校での3年間
幼稚園・保育園を卒園すると、いよいよ小学校生活に突入します。
幼稚園・保育園時代から比べてグっと成長が感じられる時期ですが、四肢障害のお子さんを持つ保護者の方々にとっては一番不安が大きい段階なのではないでしょうか。
四肢障害をもつ子どもたちは、その症状にもよりますが、一般的には下記のような小学校の選択肢があります🏫
(ざっくりですが大きく分けると下記のような分類になるかと思います)
・特別支援学校
・特別支援学級
・公立小一般学級
・国・私立小
▼前回、公立小学校に通われているお子さんの体験談を公開させていただきました。
今回この記事では、国立・私立小学校への入学を選択されたご家族の経験談をご紹介します😊
絞扼輪症候群の息子、小学校選択~これまでの日々。
これから入学を迎えるご家族へ「きっと大丈夫」と伝えたい
現在3年生の息子は、先天性絞扼輪(こうやくりん)症候群です。両手と右足の指が複数本欠損・変形しています。
通っていた保育園では幸いにも仲間に恵まれ、カリキュラム上でも特に大きな不自由を感じずに過ごしました。
幼稚園・保育園ではある程度先生の目も行き届き、十分に周囲の大人からも保護されている状態ですが、小学校ではあらゆることが一転します。
まず、一人での登下校から始まり、クラスの人数も急に増えます。複数の幼稚園、保育園から集まって構成されるため、子どもたちとその保護者を全員把握することも難しくなります。
また、四肢障害のお子さんが躊躇してしまう分野が複数待ち受けているのも小学校です。
鉄棒やうんてい、上り棒、縦笛、家庭科での針仕事などが代表的なところでしょうか。給食のお盆を持つことも慣れるまでは苦労があるかもしれません。
小学校は当然近所の公立小に進むものと考えていましたが、年長への進級を機に、ふと国立・私立小に目を向けてみようと思い立ちました。
子どもに合った環境を!と私立小学校を選択
当時の考えは「保育園のように少人数でアットホームな環境であれば本人が伸び伸び過ごせるかもしれない」というものでした。
私立小は学校毎に特色がはっきりしているため、子どもに合った環境を与えられるかもしれない、と考えました。
完全に公立派だった夫は「公立小で大勢の色んな子どもたちに揉まれた方が強くなる」という考えで、私もその考えには否定できないものがありました。
実際、精神的な強さは身に付けて欲しかったし、何といっても公立小は地元の友達ができるというのも魅力的でした。
息子本人の性格的にも、あまり敵を作ることなく男友達と絡むことができるタイプだったので、実際は公立でも何の問題なかったかもしれません。
一方の私は
「小学校は今後大学まで続く集団生活の基盤を作る場所。人数が多いと、それだけ色んな人がいて、不本意な思いをする確率も高くなるのではないか。
せめて小学校のうちは和やかな環境で過ごさせて、自分に自信をつけさせてあげたい」
という考えでした。
揉まれて強くなる場合もあれば、逆に引いてしまうこともある、と。
年長の夏前には学校見学や説明会に参加
今思えば、小学校では苛められる、という先入観でいっぱいになっていたように思います。
お子さんが公立小に通われている保護者の方からすれば大変失礼な話です。
ただ、当時の私は子どもの心を守りたい一心で、息子本人の資質や周囲が見えなくなっていたのだと思います。
私立小を選ぶにしても、高校や大学まで併設されている小学校もあれば、中学以降は併設されていない学校もあります。
年長の夏前には何校かに絞り、学校見学や説明会に参加しました。
大学付属のブランド校にも惹かれましたが、私立小を選ぶ目的を忘れないよう留意しながらの見学だったように思います。
選択したのは1クラス18人・1学年2クラスの小規模な学校
結果的に選んだ学校は、キリスト教の教えを大切にしており、1クラス18人程度で1学年2クラスという、小規模な学校でした。
一人ひとりの特性を大切にする懐の深さがあり、全ての先生が全生徒の名前を全て覚えているような学校です。
学年の垣根を越え、全員が下の名前で呼び合う兄弟のような関係がそこにはありました。
学校のモットーとしては、子どもは毎日思いっきり外で遊び、学力より先に人間関係を深め、心を豊かにする教育が必要、というものです。
校長先生のお話と、講演会が決め手に
校長先生との面談でも「できないことがあればもちろんフォローします」と力強くお話下さいました。
当時、在校生でも足の不自由なお子さんがいたり、過去にも内臓系の疾患があるお子さんが通っていたと教えて下さいました。
何より決め手になったのが、ちょうどその年に「手足のないチアリーダー」として知られる佐野有美さんが学校に講演にいらしたことです。
佐野さんに講演依頼をした学校に対し、心から感謝の意が沸きました。
「この学校なら大丈夫。ここに息子を通わせたい」と強く感じたことを覚えています。
「元気だったらOKじゃない?」
いくらアットホームな学校とはいえ、入学して半年ほどは不安が尽きない日々でした。
お友達や上級生たちから掛けられる心無い言葉で、息子の心が壊れていかないか。
できない事が増えて、自信を失ってしまうのではないか。
ところが、親の心配は杞憂に終わりました。
毎日朝早くから元気に家を飛び出し、充実した顔で帰宅する姿を見て、この学校を選んで本当に良かったと感じました。
同じバスに乗車する上級生たちは、息子の指を見て「元気だったらOKじゃない?」と、実にあっけらかんとしており、拍子抜けしてしまいました。
今となっては、公立小でも十分やっていけたのかもしれません。
小学校に入学してから開花した一面もあったり、色々な意味で親の予想が覆されました。
「できないことは無理しなくていいよ。できることを頑張ろう」
もちろん、うんていや上り棒、木登り、鍵盤ハーモニカなど、不得意とすることも多々あるようです。
しかし、先生からの「できないことは無理しなくていいよ。できることを頑張ろう」という声掛けで、息子はかなり安心して過ごしているようです。
鍵盤ハーモニカも、本人なりの指の配置を編み出したそうで、音楽の先生が驚いていました。
息子は年中からサッカーを習っていたため、むしろサッカーでは一目置かれる存在になっているようです。
また、年中・年長の頃は、NPOが主催する野外キャンプなどに参加させてきたため、比較的お友達を作ることが苦手ではなかったのかもしれません。
学校では、これからリコーダーの練習が始まります。
リコーダーはトヤマ楽器さんで購入しましたが、音の出し方が難しく、本人は一般のリコーダーを使う気でいます。
これもまた親にとっては誤算でした。
今後も、良くも悪くも親にとっては想定外な出来事がたくさんあるのだと思います。
小学生って素直で、そして優しい
息子は3年生から塾に通い始めました。学校以外でまた新たな集団に加わった形です。
その塾では学校のお友達は誰もいなかったのですが、一緒に勉強する違う学校の仲間同士、トラブルもなく過ごしているようです。
最近息子に「手のことで聞かれることはないの?」と尋ねたところ
「見せて~とか言われるから、『はい』って見せてる。どうしたのって聞かれるから、『生まれつきだから知らない』って答えてる」とのことでした。
お子さんの性格にもよって異なるかもしれませんが、息子は息子なりにこの対応でずっとやってきたようです。
どのお子さんも、自分なりのかわし方があるのでしょう。ある意味感心してしまいました。
最近では「みんな違ってみんないい」の言葉がだいぶ浸透しているように思います。そのためか、健常のお子さんがいるご家庭でもそうした考えが主流になりつつあるのかな、と感じます。
「小学生って残酷」「小学生っていじわる」などの偏った先入観は、私の中でほぼ消えつつあります。
今では「小学生って素直」「小学生って優しい」と心から感じています。
もうすぐ4年生!
最近、学校の体育の授業で倒立に取り組みました。
手に全体重がかかるため心配していましたが、自分なりに重心の置き方をマスターして倒立に成功したそうです。
来年は早くも4年生になります。4年生になると音楽の授業にリコーダー以外の打楽器も取り入れるそうなので、本人は今から楽しみにしています。
きっと、大丈夫!
不安なことだらけかもしれませんが、どうか胸を張って入学に臨んでください。
子どもたちは意外と強いものです。そして周囲は意外なほど寛容かもしれません。
もしお子さんに何か異変が見られた場合は、納得いくまで話を聞いてあげると良いようです。
きっと「あの不安は何だったの?」と思う日が来るはずですよ。
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