自転車乗りの工夫【先天性四肢障害・指欠損・短指症】
皆さんこんにちは。Hand&Foot運営部です。
突然ですが、皆さんは何歳くらいから自転車に乗り始めましたか?
私たち(30〜40代)の小さい頃は平均5,7歳頃から乗り始める子供が多かったようですが、現在は1年近くも早くなっていて平均4,9歳だそうです。
[「自転車に関する調査」日本トイザらス調べ)
幼児車種が豊富になり、キックバイクなどから始めるお子さんも多くなっているのが、その要因だそうです。
おかげさまでHand&Footにも、自転車に乗り始める年代の子供達が大変多くなってきました。
手に疾患を抱えるお子さんの親御さんの中には、
「ブレーキやハンドルをしっかり握れるのか」
「公道で安全に乗りこなせるのか」
と、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回、新しく開発された弱握力の方向けのブレーキレバーや会員さん独自の工夫した乗り方などをご紹介させていただきたいと思います。
これらの情報をヒントとし、皆さんに安心安全な自転車ライフを楽しんでいただければ幸いです。
指欠損・短指の方向け「パームブレキーバー」、片側前腕・全指欠損の方向け「前後輪同時引きブレーキ」のご紹介
⑴ 指欠損・短指症の方向け『パームブレーキバー』
前回、チハラさんの記事『パームブレーキバー体験リポート』では福岡での試乗会の様子をご紹介しましたが、今回は関東での試乗会の様子をご紹介いたします。
当日は真夏日という事もあり、開発したPMT社さんの計らいで協力老舗ブレーキメーカー株式会社吉川製作所さんの倉庫にて試乗させていただきました。
ご挨拶もそこそこに、早速子ども達は補助輪付き12インチ車に試乗。
自転車自体がほぼ初めてというお子さんもいらっしゃいましたが、補助輪付きということで乗りこなすのにそれ程の時間は要しませんでした。
肝心のブレーキングも通常のブレーキレバーを経験していない分、操作を覚えるのも容易だったようです。
各々の手の状態に合わせてバーの位置をずらしたり、付属パーツを取り付けていただいたりと、細やかな微調整をしていただいたおかげで、子どもたちの習得も早かったです。
開発担当者のSさん、ご配慮ありがとうございました。
また試乗の様子を見ていて感じたのですが、少し指の短いお子さんは19mm径タイプのハンドルの方が細くて掴みやすく、上体も安定するように思いました。
パームブレーキバーは現在、一般的な普通自転車ハンドル22.2mm径タイプに合わせた1種類のみしか生産されていませんが、開発中のパームブレキーバーでは、アジャスターパーツををはめることで19mm径タイプにも取り付け可能とのお話です。
ハンドルの握りにもご不安がある方は、こちらをご検討ください。
[左からバー単体、アジャスター付きバー]
成人用と三輪自転車もご用意いただいたので、参加の親会員さんと一緒に試乗。以下、感想。
・結果、危険を察知してから止まるまでの距離を縮められる
・手のひらに当てたバーを数センチ前に押す(もしくは下げる)だけ、簡単!
・握力はほぼ必要なく、手首を押す腕の微力のみ
まさに新体験でした!
何故今までこういったタイプのレバーが無かったのでしょうか。
握力や握る動作を必要としないので、裂手症・絞扼輪症候群・合短指症などの方でもしっかりとした制動を行うことが出来る、大変優れたユニバーサルな装置だと思います。
また、手の不自由な方だけではなく、ブレーキをしっかり握れない乗り始めの子ども達にも最適だと思います。
手に怪我を負いレバーを握るのに不自由さを感じていた、とある方への配慮から始まった新しいブレーキレバーの開発。
4年もの研究開発の歳月を要し、完成した装置の初めての受注先は、筋肉が固まっていく病気を患う小学6年生のお子さんだったそうです。
お子さんは納車後、友人と遠くへ出かけたり通学に利用したりと大変重宝しているとの事。
子どもは自転車に乗れるようになると、一気に行動範囲が広がりますよね。
手に不自由さを感じている子ども達も、皆と同じく大いに自転車を乗りこなし、世界が広がる喜びを感じて欲しいと思います。
パームブレーキバーの今後の世間への広がりにも期待しています。
▼詳細はこちら
⑵ 片側前腕・全指欠損などの方向け『前後輪同時引きブレーキ』
次にご紹介するのは、こちら2つの特殊ブレーキパーツです。
⑴ DIA-COMPE 『TECH-77W』(株)ヨシガイ製
⑵ BrakeDoubler tempra cycle製
両製品とも、前後輪用2本のブレーキワイヤーを1つのレバーにまとめ、前後輪の同時制動を可能にした、特殊パーツになります。
片側の手に疾患があり握る動作が難しい方でも、もう片方のブレーキをしっかりとかけ、止まることが可能です。
こちらのパーツ、成人・競技用向けの製品ではありますが、一般的な自転車ブレーキ(キャリパーブレーキ)が装着されていれば、幼児車にも取り付け可能です。
ただ注意する点も。
・後輪ブレーキが先にかかるよう微調整が必要(前輪が先だと前転する恐れあり)
5〜6歳のお子さんの握力は平均8〜9k gくらいで、成人の約5分の1程度。
もし上記パーツを幼児車で使用される場合、専門店で取り付け・調整をした後、内閣府令で定める制動基準( 時速10k mで走行時、ブレーキ操作後3m以内での停止)をクリア出来ているかを必ずお試しの上、公道をご利用下さい。
また、片方の腕が短い、あるいは前腕・手指の欠損等でハンドルを握ることも難しい方は、会員さんが提案されているこちらのパーツもあわせてご検討ください。
⑶ エアロバー補助ハンドル
競技用などで使用される上記補助ハンドルですが、こちらを取り付けることで肘から前腕部にかけて面でハンドルを押さえることができます。
舗装が劣化した道路などは凹凸が目立ち走りも不安定になるので、こういった安定した状態を保てるパーツを是非ご利用ください。
(3)会員さん独自の工夫
同じ疾患や障がいでも、指の本数や長さが違ったりとその症状は様々。
こちらでは、会員さんが各々のお子さんの状態に合わせて行っている改良や、独自の工夫をご紹介します。
⑴ 絞扼輪症候群 Aさん
⑵ 裂手裂足症 Mさん
⑶ 右前腕部欠損 Tくん
Aさん、Mさんはブレーキレバーの位置をずらし、ハンドルとレバーの間隔を狭め握りやすく改良しています。
こちらの改良は比較的容易なため、お試しになられている方も多いかと思いますが、間隔を狭め過ぎると遊びがなくなり、ブレーキの効きが悪くなることもあるようです。
こちら販売店の自転車整備士さんが対応してくれますので、そちらでの調整をお勧めします。
右前腕部欠損のTくんはハンドルが握れないため、ペットボトルを半分にした物を取り付け、中に入れた手が固定されるように改良しています。
完全に固定してしまうと転んだ時に非常に危険ですが、こちらならすぐ抜けますし大変素晴らしいアイデアだと思います。
⑷ 道路交通法と自転車保険に関して
制動装置(ブレーキ)を特殊なパーツを使い改造した場合、法律上や保険の適用に問題がないかは気になるところ。
平成27年6月に道路交通法が一部改正され、自転車の悪質運転危険行為(14項目)で3年以内に2回以上摘発された場合、必ず安全講習を受けなければならなくなりました。(従わない場合5万円以下の罰金)
(警視庁 交通課https://www.police.pref.hyogo.lg.jp/traffic/bicycle/data/kousyuseido.pdf)
この中に『制動装置(ブレーキ)不良自転車運転(道交法63条の9第1)』の項目があり、前輪及び後輪に制動装置を備え付けていない自転車を運転してはならない、とあります。
前後輪同時ブレーキパーツを取り付けた場合、レバーが片方のみとなるため前輪(もしくは後輪)のみのブレーキ装着と誤認され、事情を知らない警察官に呼び止められる可能性はあります。
ですがきちんと前後輪を制動する事が証明出来れば問題はない、と警視庁交通総務課の方にご回答いただきました。
自転車保険に関しても、「道交法上問題ない改造であれば事故を起こしても保険適用外となる事はない。(回答:東京海上日動火災保健[eサイクル保険])」と回答をいただきましたのでご安心ください。
最後に今回ご紹介させていただいたパーツですが、「試してはみたがウチの子には合わない」という事も充分に考えられます。また、合わなかったためにお怪我をされるといった事態も起こるかもしれません。
そういった点に関しまして、当会は一切の責任を負いかねます。
必ず親御さん、ご家族のご判断・ご了承の元でご使用になり、安心安全な自転車ライフをお楽しみください!
「右手の指が3本でうまれてきた女の子」
が主人公の絵本を製作しています
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NPO法人Hand&Footでは、生まれつき右手の指が3本の女の子のものがたりを制作しています。
「ふつうって何だろう?」
「多くの人と違うことはかわいそうなこと?」
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この絵本と共に、「初めて会ったとき、どうかびっくりしないでね」そんな気持ちがたくさんの人に届くことを、子どもたちと共に願っています。
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