インクルーシブパークに行って来た!
© (公財)東京都公園協会
「皆さん、最近公園に行っていますか?」
こんにちは!H&F運営部です。
緊急事態宣言に蔓えん防止措置、なかなか普段の生活を取り戻せない日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
モヤモヤした状況の中、せめて子ども達には密を避けつつ、公園で思う存分遊んで欲しいところですよね。
運動神経や創造力、コミュニケーション能力や自信力などなど、発育時の多くの能力を養ってくれると言われる公園での遊び。
実はコロナ禍以前より、この貴重な公園遊びの機会を、物理的・社会的な障壁によって逸してきた子供達が存在していました。
障害があったり、国籍・言語が違ったりなどのいわゆるマイノリティに属する子供たちです。
中でもダウン症や発達・身体障害など、心身に生まれつきの特性を持った子供達は、
『こだわりが強く、我慢が苦手で迷惑をかけてしまわないか』
『車椅子ではそもそも遊べる遊具が無い』
といった様々な理由により、公園に出向くこと自体が高いハードルとなっていました。
そのような現状の中、2020年3月。東京都世田谷区に国内初の試みとなる、障害のある無しに関わらず誰でもが遊ぶことのできる『インクルーシブパーク』が誕生しました。
障害のある無しだけではなく、年齢・性別・国籍など違う特性や能力を持った子供たちが、同じ遊具を使い、それぞれの遊び方で一緒に楽しみ学ぶことができる公園。
緊急事態宣言明けの4月某日、密を避けつつ探訪して参りましたので、その模様をご紹介します!
みんなのひろばin世田谷区砧公園
場所は東京都世田谷区の都立砧公園。元々はゴルフ場だった自然あふれる広大な敷地内にインクルーシブパーク『みんなのひろば』はあります。
公園誕生のきっかけはダウン症児の母親でもある龍円愛梨都議の都議会での提案。
包括的な支援が充実している米国のように、支援・配慮が必要な子供達が暮らしやすいインクルーシブな社会を実現するため声を上げられました。
▼龍円愛梨オフィシャルブログ『SunnyLifewithNICO』より
© (公財)東京都公園協会
到着してまず目に入って来たのが、遊具の鮮やかなカラーリング!これは色弱などの視覚障害がある子供でも識別しやすいよう、視認性の高い着色を施しているため。
一方遊具以外、広場全体をみると落ち着いたトーンで統一され、刺激色を苦手とする自閉症児なども落ち着いて遊べるよう配慮が施されていました。
大型ブランコ
© (公財)東京都公園協会
行列も出来ていた人気のブランコ3種。一般的なブランコの他、背もたれのある椅子型と大きな円盤型が並んでいました。
椅子型は安全バーでしっかり固定されるので、座位が難しかったり、手指の欠損などで鎖を握るのが苦手だったりする子であっても、安全に乗る事ができます。
円盤型は体幹が弱い子は寝そべって乗ったり、介助者やお友達などと一緒に乗って楽しんだりすることもできます。
船型複合遊具『みらい号』
緩やかな傾斜のスロープがあり、車椅子や歩行器ユーザーでもトップデッキまで登る事ができます。
デッキの上はすれ違える広さが確保され、落下防止の手すりも。広めの滑り台は手前に段差を設けるなど、車椅子からでも乗り降りしやすい工夫が施されています。
複合遊具
© (公財)東京都公園協会
こちらにも幅の広いスロープが設置されています。トップデッキには熱中症予防、強い日差しが苦手な視覚過敏な子にも優しい日除け。
通常遊具の階段は子供サイズで幅せまですが、こちらは介助者が畳んだ車椅子を持って降りれるよう広めに作られています。
回転遊具『ぐるぐるマウンテン』
回転遊具は子供は好きですよね、最も人が集まっていました。
近所の公園にも跨るタイプのドーナツ型回転遊具があるのですが、体幹や握力が弱い子は落下の危険性があるんですよね。
その点こちらは凹みにすっぽり身体が収まるので、色々な子が安全に楽しむ事ができます。
年代が上のスリルを味わいたい子は立ち乗りで一緒に遊べて、まさにインクルーシブの見本のような遊具です!
迷路
© (公財)東京都公園協会
顔を出したり触れて遊べる仕掛けがあったり、子供が夢中になりそうな迷路。視覚に障害のある子は、壁の鳥の足あとを辿ってゴールを目指せます。車椅子でも通れるよう通路幅には余裕がありました。
その他の遊具
介助者やお友達と並んで乗れるスプリングシーソー、聴覚で楽しめる楽器遊具、騒がしい環境が苦手な子が落ち着く事ができるシェルター『きりかぶ』など。
遊具以外にはこんな配慮も。
- 転んでも安全な柔らかいゴムチップ舗装の地面
- 臥位が楽な人や乳幼児のための幅広ベンチ
- 車椅子でも囲めるテーブル
- 急な飛び出しを防ぐフェンス
- 障害者用区画のある駐車場、誰でもトイレなどがアクセシブル
遊ぶ人を選ばない、誰でも受け入れてくれる公園は非常に居心地の良い空間でした。
もちろん配慮の行き届いたハード面だけが整備されても、障壁が全て取り払われるわけではありません。
学校ではなかなか出会うことのできない多様な子供たちとこの場所で接し、様々な違いを知り、お互いを尊重して相互理解を深める。
『違い』は決して特別なことではないと理解し、受け入れてくれる子供や親御さんたちがいる優しい空間。
公園がそのような場所になれば、きっと周辺に置かれがちだった親子も安心して遊びに行くことができるのではないでしょうか。
インクルーシブパークは今までの公園の在り方を変え、子供達をこれからの共生社会を担う大人へと成長させてくれることでしょう。
探訪後記
世田谷区に続いて豊島区(キッズパーク)での開園、さらに府中市や渋谷・品川区でも整備が予定されているインクルーシブパーク。
みんなのひろばをモデルに、国・都立の規模が大きい場所だけではなく、市区町村の身近で小さな公園でも整備が推進しやすいようガイドラインが作成され、補助金などの制度も創設されるそうです。
地方自治体の職員さんや議員さんなども視察に訪れているということで、今後全国的に波及し、新たに整備される公園には必ずインクルーシブ的な要素が盛り込まれる、という日も近いのかもしれません。
今後の広がりに期待します!
▼神奈川県にも!県内初のインクルーシブ公園
公財)東京都公園協会さんが
一社)TOKYO PLAYさん協力のもと冊子『みんなの声からはじめよう!』を発行されています。色々な立場の人の公園にまつわる本音が掲載されているので、こちらも是非ご覧下さい。
【冊子PDF】
インクルーシブ・ユニバーサルデザイン遊具のある公園が掲載。
▼『みーんなの公園プロジェクト』
文/Hand&Foot運営部